結合性双生児概観

conjoinedtwin-1

二人の身体が結合した重複奇形は、英語ではConjoinedTwins(コンジョインド・ツインズ)、Saim Twins(シャム・ツインズ)、また日本語においては結合性双生児、シャム双生児、重複双生児、重複双胎などと呼称されている。その分類として均等重複奇形、不均等重複奇形が存在する。均等重複奇形とは、二人の身体が均等なバランスで癒合した状態を指し、不均等重複奇形とは不均等なバランスで癒合した状態を指す。この不均等重複奇形において、成長が遅れている側の双子のことを寄生性双生児と呼ぶ。現在ではこれらの呼称は様々に使い分けられているが、その結合状態は双子によって様々であるため、すべての結合双生児を完全に分類することは不可能である。

結合性奇形体は、一卵性双生児の出生のうち200分の1の確立で発生するとされ、出生全体で見ると、その出生率は20000から100000分の1といわれている。しかしそれら出生のうち、40%から60%は死産し、産まれた場合でも出生から数日でその多くが死亡すると言われる。結合性双生児のうち、実に70%が女性であるとされているが、その理由は定かではない。結合性双生児の分離手術に史上初めて成功したのは1689年、胸骨が結合したシャム双生児のケースである。執刀はドイツのGコニグ医師がスイスのバーゼルで行った。

1900年にはブラジルのシャム双生児、マリアとロザリナ姉妹が9歳のとき分離手術が行われ、手術は成功し、二人はその後も生き続けた。1950年代から外科技術の進歩と共に分離手術は盛んに行われるようになり、1953年には米ルイジアナに生まれたキャサリーンとカロライン・モウトン姉妹の分離手術が行われた。二人は背中を通じて結合していたが、二人が8歳のときに手術が行われ、結果は成功。二人は共に生存し、これが現代的分離手術のはじまりであったと言われている(しかしキャサリーンは1985年に自殺を遂げた)。


結合性双生児の分類

結合性双生児は語の最後に「-pugus」(ギリシャ語における"接合")とする形容詞をつけることで分類される。これらの分類は過去に奇形学者、アンボロワーズ・ペレやゲオフリー・セント・ヒラリーらの先達によって名づけられたものである。しかし現在、誕生している結合性双生児は必ずしもこれら分類に類型しきれるものではなく、またそれらいくつかの分類を組み合わせることで分類される場合もある。

胸結合体

Thoracopagus胸結合体(Thoracopagus)は、胸の上部、鎖骨から胸骨にかけて結合している双子である。この場合、双子の頭、腕、足はそれぞれ分離しているが、心臓はその結合部に位置し、奇形化した単一の心臓を共有している場合が多い。幾組かの結合体は別々に心臓を持っている場合もあるが、この場合も心嚢はひとつである。

分離手術は極めてリスクが高く、実施された場合は片方が死ぬ場合が多い。しかしこれまでいくつかのケースにおいて、分離後も生存したケースも存在している。米ロードアイランドに生まれたルーシー・キャディ、ヴェレナ・キャディのケースは中でも最も有名なものであり、彼女たちは7歳まで生存した。しかし彼女らが共有していた心臓には3つの心房しかなかったという。胸結合体はこうした結合性双生児の中でも最も出生率が高く、その比率は結合体全体の35%に上る。

臍帯結合体(Omphalopagus)

Omphalopagus1臍帯結合体(Omphalopagus)は腹部(胸骨から鼠蹊部)を結合点とする双子である。こタイプの双子はしばしば肝臓や消化器官を共有しているケースが多いが、心臓、頭、腕、足は分離して持っているため、分離手術の成功率は高い。1951年に誕生したロニー・ガリヨンとドニー・ガリヨン兄弟は、今日生存している臍帯結合体双生児の中で、分離手術を行っていない唯一の兄弟であると言われる。またこの臍帯結合体の出生率は全体の30%程に上る。

剣状突起結合体(Xiphopagus)

Xiphopagus剣状突起結合体(Xiphopagus)は胸部の一部が剣状に突起し、その部位を結合点として繋がった双子である。双子は軟骨、そして柔組織で結合している場合が多い。このタイプの双子は生命維持に関わる器官を共有しない場合が多いため(稀に肝臓を共有している場合がある)、分離は比較的容易である。有名なチャン・バンカーとエン・バンカー兄弟(1811-1874)はこの剣状突起結合体で、肝臓を共有していた。この症状はしばしば胸骨結合体(Sternopagus)とも呼ばれ、その出生率は結合体全体のおよそ3%程度である。

坐骨結合体(Ischiopagus)

Ischi1-1坐骨結合体(Ischiopagus)は坐骨(骨盤前部)及び、脊柱下部(仙骨)で結合する双子である。この双子は脊柱を中心に180度の状態で結合し、三本の足、または四本の足を持っている。これら坐骨結合体のうち、70%が四本の足を持つが、三本足のケースでは、しばしば三本目の足は二本の足に融合され、双子のどちらもコントロールできない"使えない"足となる。ロシアに誕生したマーシャ・クリヴォシュリョポヴァとダーシャ・クリヴォシュリョポヴァ兄弟(1950-2003)は三本足の坐骨結合体である。彼らの三本目の足は、彼らが16歳の時に切断されている。この坐骨結合体の出生率はおよそ全体の14%を占める。

坐骨-臍帯結合体(Ischio-omphalopagus)

坐骨-臍帯結合体(Ischio-omphalopagus)は臍帯結合体、そして坐骨結合体の合併症状である。脊柱を結合点としてYの字型に結合し、この場合は三本の足と単一の睾丸を持つ。

側所結合体(Parapagus)

側所結合体(Parapagus)は胴の上部で結合し、別々の頭、腕を持つが、しばしば三本目の足を持つこともある。しかし実際にはこの名称は適切ではない。専門に「剣状-胸-坐骨結合体(ipho-thoraco-ischiopagus)」、もしくは「剣状-臍帯-坐骨結合体(xipho-omphalo-ischiopagus)」、あるいはそれ以外の名前で呼ばれることが多い。

二頭体(DicePhalus)

Dicephalus二頭体(DicePhalus)は側所結合体の一分類である。この場合、双子は首、もしくは胸の上部を結合点としてつながり、二つの足と一組の生殖器官のみを持つが、しばしば三本から四本の腕を持っている。またもし心臓を二つ持っていた場合は、分離しない限りは長く生存する可能性が高い。有名なヘンゼル姉妹(アビゲイルとブリタニー・ヘンゼル)(1990-)は二つの心臓を持っていたため、彼女らはスポーツをその趣味とするなど、今日でも元気に暮らしている。

頭蓋結合体(Craniopagus)

Craniopagus頭蓋結合体(Craniopagus)は二つの身体が頭蓋骨の一部をその結合点として繋がる双子である。この場合、双子は脳と脳の動脈を共有しているため、分離手術は非常にリスクが高い。この頭蓋結合はその結合状況によって更に分類することが出来る。垂直型頭蓋結合 - 頭頂部を結合点として180度の形で結合している双子、後頭部頭蓋結合 - 後頭部で結合している双子、前頭部頭蓋結合 - 前頭部で結合している双子、側頭部頭蓋結合 - 側頭部で結合している双子などである。

頭部結合体(Cephalopagus)

Parietal Cranioほぼ同型に分類される頭部結合体(Cephalopagus)では首と頭で結合し、身体はそれぞれ分離している。併発する脳の奇形により、これらの症状を持つ双子が順調に生育することは難しく、死産となる可能性は高い。生まれた場合でも数時間で死亡するケースがほとんどである。またこれらはしばしsyncephalus、janiceps(ヤヌス体、1頭2顔体形成)とも呼ばれる。

頭胸結合体(Cephalothoracopagus)

Cephalopagus頭胸結合体(Cephalothoracopagus)は胸結合体と頭部結合体の合併型である。双子は頭部、首部、胸部において結合し、それぞれ分離した腕と足を持っている。心臓や脳を共有している場合が多く、生存率は低い。またしばしばepholothoracopagus、prosopothoracopagus、craniothoracopagusなどとも呼ばれる。

二顔体(Diprosopus)

Cephalothoracopagus側部結合体の一分類である二顔体(Diprosopus)は一人分の身体に一人分の頭、そこに二人の顔が結合して現れる。現在、一般にはこれらの症状は双生児の奇形とされているが、果たして双子が原因であるのか定かではない。しかしこれらの双子は結合性双生児として分類され、それは先に挙げた分裂説によって説明される可能性は高い。この症状は人間においては非常に稀であるが、羊、牛、猫においては決して稀ではない。

殿結合体(Pygopagus)

Pygopagus殿結合体(Pygopagus)は背中と背中(骨盤と脊柱下部)で繋がっている双子である。それぞれ分離した心臓を持ち、頭と四肢を持つ。この殿結合対で生存する者は女性が多く、男性の双子の場合は死産となる確立が高い。歴史的に、成人するまで成長する結合性双生児にはこの殿結合対が多いことが知られている。また分離手術は比較的成功率が高いが、脊柱を分離するため、分離後、結合点以下が麻痺する確立は高い。illeopagusとも呼ばれる。

脊椎結合体(Rachipagus)

Rachipagus脊椎結合体(Rachipagus)は背中の脊柱から肩にかけて結合した双子である。今日、こうした結合体は存在せず、理論の中で確認されるのみである。(注:しかし発見例も報告されている:PMID: 8711621 [PubMed - indexed for MEDLINE)

寄生性双生児(Parasitic Twins)

寄生性双生児(Parasitic Twins)とは、不等接着した双子のうち、十分な栄養が得られず、成長が遅れた側を指す。上記の全てにおいて、寄生性双生児が発生する可能性は考えられる。

結合性三胎(結合した三つ子)

結合性三胎(三つ子)もしくはそれ以上の数の結合奇形体が存在するかどうかといえば、理論的には可能性はある。しかし、今日までそうした結合性三胎が確認されたケースは知られる限り、存在しない。(2007年にペルーで頭部が3つある幼児が生まれたというニュースが流れたが、続報はなく詳細は不明である)その理由として、一卵性三つ子の場合、受精した胚は一度二つに分化した後、更にそのうち一つが二つに分化するというプロセスを経るからである。また結合性双生児は通常の出生よりも遅く、卵が分割する際に発生するため、こうした現象が起こることは考えづらい。もし不可能でないと仮定するならば、この三つ子の卵は二度、不完全に分割することになるが、その可能性は極めて低いと言える。しかし現在では毎年約200組の結合性双生児が誕生し、そのうち3組から4組には同時に非結合の三つ子(即ち、一人の子供と、双子)が誕生している事は、興味深いデータであると言える。この三つ子は一卵性の場合も、二卵性の場合もある。