レバ(ドリ)・スキャペルとロリ・スキャペルは1961年9月18日、米ペンシルヴァニアに生まれた。彼ら二人は存命中の結合性双生児の中では、最長寿であると言われている。二人は結合性双生児の中でも2%と言われる、頭蓋結合性双生児として生まれ、その後24歳になるまでを精神病患者施設で過ごした。二人は母親がつけた韻を踏んだような名を呼ぶことを強く嫌い、ドリは後に彼女の憧れであるレバ・マッケンタイア(カントリー・シンガー)にちなみ、レバと改名している。
二人は脳のうち30%を共有しており、結合点であった左目は機能していなかった。レバは脊柱水腫を患っていたため、歩くことが出来ず、独自にあつらえた車輪付きのスツールを用いて移動した。また二人の結合点は互い違いであったため、生活には苦労がたえない。テレビを見る時には鏡を使い、またお互いの顔を見る時も鏡を使わないければならないのである。
二人の脳は結合され、共有されているために、分離手術を行うことは、たとえ今日の医科技術をもってしても実質的に不可能であると言われる。しかし、二人はそれぞれお互いに別々の思考、感情と性格を持っていることを、自ら打ち明けている。
施設を離れた後、二人はそれぞれお互いの個性を生かし、"別々の道"を歩んでいる。レバは長年夢見たカントリー・シンガーとして1997年にはL.A音楽祭において最優秀カントリー・シンガー賞を受賞、米国各地をはじめ、ドイツなどでも公演を行い、2002年にはボクシングの試合において国歌斉唱の大役を果たしている。それ以外にもボーリング大会に出場してトロフィーを獲得し、他にも障害者の為に特殊な機器をデザインし、そこにはハンディキャップをもじった"handi-capable(ハンディ対応)"とする文字を刻印した。
一方のロリはレバのコンサートがない日には時間を作り、病院の洗濯係として働いている。ロリは非常にユーモアに富み、レバよりも率直に物事を話すという。例えば以前、町で彼らを見た通行人が興味本位で写真を撮ろうとした際、ロリはこう叱り付けた。「断りもなしに私の写真なんか撮らないで!」そしてレバの方を指さし、こう言うのだ。「撮るなら彼女を撮りなさい。彼女はショービジネスの人間ですからね!」
彼女たちは頻繁にトークショーやドキュメンタリ番組に出演している。1988年にはA&Eドキュメンタリ番組「Face to Face」に出演、医学史、そして社会史の中における結合性双生児を描く同番組の中で中心的役割を果たした。現在、二人はペンシルヴァニアのリーディングにペットのチワワ犬(この犬は後ろ足が麻痺しており、レバのデザインした車輪機器を使って生きている)と共に暮らしている。
「私たちはこれまでに分離したいなんて一度も思ったことはありません。もし私たちが分離するときがくるとしたら、それはどちらかが死ぬ時でしょう。もしその時が来たら、私たちはもう片方がここにいないという理由、ただそれだけで分離することを受け入れるでしょう」 レバは言う。
「お願いだから、私たちが大変そうだなんて、勝手に思わないでください。少なくとも私たちのどちらもまだ、そんなこと一言も言ってないんですからね」 ロリは言う。