寄生性双生児概観

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寄生性双生児の分類

上腹部寄生

上腹部寄生:ジャック・ハンターはこれらの寄生奇形を不完全体結合体(heteradelphians)と呼んでいる。このカテゴリーでは不完全に発達した双子が腹部等に寄生した形で生まれる奇形を扱う。これら双子は多くの場合において、寄生体側の未発達の頭部が、その自生体側の腹腔に埋め込まれた形で誕生する。その為、自生体側にも内臓器官の障害が発生する形が高い。例えば有名なベティ・ルー・ウィリアムスのケースにおいては、そうした症状がおそらく死亡原因となった。また寄生体側は多くの場合において、無頭-無心体(acephalic-acardiac)として誕生するため、その生命活動は完全に自生体側に依存する。

※写真は2003年にニュージーランドで誕生した二頭体の幼児。これらの双生児について、しばし"双頭"といった表現が見られるが、パーソナリティは別個であり、"一つの身体に頭二つ"ではなく、"二人の頭に身体が一つ"というのがより正確な表現である。

- Zee News - Pakistan doctors separate 'parasite' twin from healthy boy


寄生性二殿体(Dipygus)

寄生性二殿体(Dipygus)、または殿肢体(Pygomelus)は下肢の重複奇形となって現れる。完全な寄生性二殿体においては、小さな骨盤が隣り合って存在するため、自生体は四本の足を完全にコントロールすることが出来る。四本足を持っていたミルトル・コルビンにおいては、内側に寄生した二本の足は未発達であったものの、それらの足を動かすことが出来た(また彼女は男女の両性器を持ち、それらは完全に機能していたという)。

1922年、南アフリカで誕生したアブドゥル・アズィズ・レインロウンはやはり完全な四本足を持つ寄生性二殿体であった。しかし、寄生体の足は彼が3歳の時に切断された。こうした二殿体の双子は寄生体の足を骨盤や脊柱下部に結合した状態で持ち、それらは自生体側の足の影響下で動かすことは出来るが、寄生体側の足のみを独立して動かすことは不可能であると言われている。またこうした症状の双子は足以外にも腕、足、胸などを複数持つことがある。


寄生的頭蓋結合体(Craniopagus parasites)

寄生的頭蓋結合体(Craniopagus parasites)は自生体の頭部に寄生体が癒着した状態で誕生する。この寄生的頭蓋結合体の症状は極めて稀だが、これまでに記録される中でその完全なケースは"ベンガルの双頭少年"として知られるケースである。この少年は頭蓋の頂点に、十分に発育した逆さまに癒着した寄生体の頭を持っていた。寄生体の首は切り株上の形をした首を持ち、その末端は桃のような形で切れていた。少年が何らかの表情を作ると、寄生体の顔も同時に何らかの表情を見せたという。少年はある日、コブラにかまれて四歳の短い人生を終えたが、その後少年の死体は有名なジョン・ハンター医師によって解剖され、頭蓋骨は英国に運ばれている。解剖の結果、寄生体側の首には骨や心臓、肺などの痕跡が発見されたという。またその頭蓋骨は現在でもハンテリアン博物館に展示されている。

近年のケースとしては、2003年、ドミニカで誕生したレベッカ・マルチネスがこの寄生的頭蓋結合の双子として生まれた。レベッカの寄生体頭部は先のベンガルの双頭少年によく似た構造的特徴を持っていた。寄生体側の顔は奇形的で表情までは見られなかったが、首の付け根の部分には臓器や四肢の痕跡が発見された。また脳波スキャンの結果、自生体側に依存する未発達の脳が発見されている。医師は分離しない場合、レベッカに将来、何らかの心身の障害が発生する可能性を指摘し、分離手術が行われたが、2003年2月、レベッカは分離手術の後、出血によって死亡した。

- X51.ORG : 寄生的頭蓋結合の幼児、史上初の分離手術へ
- X51.ORG : 寄生的頭蓋結合の幼児、史上初の分離手術へ 2

2005年にはエジプトにおいて、寄生的頭蓋結合の少年が分離手術に成功したというニュースが報じられた。手術を受けたマナル・マジェドはレベッカ同様、頭部の頂点に"あまりにも良く発達した"寄生体の頭部と首を持っていた。またレベッカや先のベンガルの双頭少年が垂直型寄生的頭蓋結合であったのに対して、マジェドの場合はほぼ側頭部に寄生体が癒着していた点で異なる。寄生体の頭部は自生体と独立して表情を作ることが出来たが、おそらく精神は未発達であり、原初的な反応を示すに留めた。マジェドは分離に成功し、予後も順調であるという。またこうした寄生的頭蓋結合のケースは極めて稀ながら、分離手術に成功したのはこれが歴史上、世界初となる。

- X51.ORG : 寄生的頭蓋結合の少女、史上初の分離手術成功か


胎児内胎児(fetus in fetu)

胎児内胎児(fetus in fetu)は自生体側の体内で、嚢胞内に存在する寄生的状態の双子を指す。自生体がその寄生体側の存在に気づくのは成人になったのち、腹部や背部に痛みを感じて気づくことが多いという。またこの胎児内胎児としばしば誤られるのが、類皮嚢胞(皮様嚢胞、皮膚嚢腫、奇形嚢腫、テラトマ)である。この嚢胞は大きく肥大した皮膚組織によって覆われ、(本人の)髪の毛、汗、骨、歯や皮膚脂を含む場合がある為、しばし上述の症状と混同されがちである。またこれら胎児内胎児、類皮嚢胞は多くの場合、ワックス状の物質によって覆われており、これは皮膚が出す脂分によると言われている(体内にあって、脂分が流れ出る先がないために、それらは嚢胞を覆うような形で残存するからである)。

- X51.ORG : 35歳男性の背中から双子の兄弟が発見される


寄生性二顔体

二頭体(Dicephalic parapagus 、dicephalus)は一つの身体に二つの頭が存在する奇形である。この場合、双子はそれぞれ別の脳を持つ(参考)。また二頭体( Diprosopic parapagus )とは、一つの身体(胴)に、ひとつの頭、そして2つの顔を持つ状態を指す(参考)。

ソニック・ヘッジホッグと単眼症

"ソニック・ヘッジホッグ(SHH)"とは胎児に作用する特殊なタンパク質の呼び名である。このSHHは胎児の段階において、人間の中線の形成に作用するが、不足した場合、単眼症(単一の眼窩に二つの目が形成される症状、サイクロピアとも呼ばれ、ギリシャ神話のサイクロプスをその語源とする)等の原因となる。このSHHの不足から体の中線が形成されないために全前脳症(前脳が半球などに分離しない症状)を発生させ、そしてその最重症状として、単眼症が発生する。このSHHによって、通常は人間の眼が適切な距離に保たれ、その中心として鼻が形成されるのである。従って、この単眼症状においては、眼窩はひとつとなり、鼻も形成されない場合が多い。

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このSHHの不足によって起こるとも言われる、もう一つの奇形が人魚体奇形(Sirenomerlia / 先天的に下肢がひとつに癒着した状態で、文字通り人魚のような姿として産まれる)である。2005年にはペルーにおいてこの人魚体奇形の少女の足分離手術が行われ、無事成功した。

- X51.ORG : 人魚体奇形の少女、両足の分離手術に成功 ペルー

逆にこのSHHが過剰に供給された場合、胎児には如何なる影響が発生するのか、かつてある科学者は実験を行っている。実験ではニワトリの胚を用いて多量のSHHを投与した。その結果、産まれたニワトリは皆、両目が異常に離れて誕生し、一部には嘴を二つもって生まれたものもいたという。

これらの実験結果から、寄生性二顔体は、実際には寄生性の双子による症状ではなく、SHHの過剰がもたらすのではないかという推測もある。奇形を遺伝学的に分析するアーマンド・マリエ・リロイはまた、こうした理論を唱え、かつてカリフォルニアのサイドショーにいた二顔体の豚をそのサンプルとして挙げている。

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